2023/02/07 【レポート】[魚講 後期04]笑って学ぼう!さかな芸人ハットリの面白お魚トークショー

第8回目の魚講では、さかな芸人ハットリさまに「笑って学ぼう!さかな芸人ハットリの面白お魚トークショー」というテーマで講演していただきました。

 

まずは、“魚の名前で歌ってみた!”ネタでたくさん笑わせていただいた後、面白お魚トークショーとして、ハットリさまが注目する3つのトピックについてお話していただきました。

1つ目が「魚類相の変化」です。最近ニュースなどで「獲れる魚が変化している」といった内容を多く目にします。この変化について、ハットリさまも実際に“フタホシフエダイ”や“カタボシイワシ”、“オトメベラ”といった魚を従来報告されていた生息地とは異なる、より北上した場所で釣り上げたという経験より、ひしひしと感じておられるとのことです。特に“フタホシフエダイ”について、研究機関への寄贈を要求されたものの、既に食べてしまっていたというお話はハットリさまらしく面白かったです。

2つ目が「未利用魚の利用」です。最近よく耳にする“未利用魚”という言葉ですが、ハットリさまは「流通できない理由がサイズや知名度など多岐にわたるため、未利用で括るのは無理があるのではないか」という考えから、この“未利用魚”というワードをあまり言わないようにしているとのことでした。そこで今回は『さかな芸人ハットリがオススメする知られざる美味魚』と言い換えて、沿岸で獲れる魚から“カゴガキダイ”、“マタナゴ(ウミタナゴ)”、“キュウセン”の3種類、深海で獲れる魚から“スミクイウオ”、“バラムツ”、“ギンザメ”、“サギフエ”の4種類をご紹介していただきました。私が特に気になったのが、魚の味を評価しているサイトにて究極の美味とされているらしい“カゴガキダイ”と、ノドグロと遜色ないほど脂の乗りが良いらしい“スミクイウオ”です。ぜひ食べていたいです。

3つ目が「外来魚の利用」です。ハットリさまは『半年間外来生物を食べて生活する』という企画を達成されており、その時のエピソードと共に“ブラックバス”、“ブルーギル”、“アメリカナマズ”についてご説明していただきました。特に“ブラックバス”に関してはハットリさまが外来生物について考え、取り組むようになったきっかけとなる魚であるとのことでした。また、「外来生物を取り扱う難しさ」についてもお話しいただきました。ハットリさまのように外来生物を獲って食べることで個体数を減らそうとする人がいる一方で、プロのバスアングラーなど外来生物が生息してこそ成立する仕事に就いている人もおられ、その2者間のバランスを取ることが非常に困難であり、今後の課題であると仰っていました。

最後に、今回の講演を受講した私の感想です。今回ハットリさまの講演を聞き、“魚類相の変化”や“未利用魚”、“外来生物”といった生物関連問題について、『食』というアプローチで対応することの魅力を知ることができた一方で、「それら問題への対応の難しさ」も強く感じました。今回の講演の中でも出てきた通り、“魚類相の変化”に関しては、せっかく新たにブランド化したのにも関わらず、再び獲れる魚が変化して獲れなくなるかもしれません。“未利用魚”に関しては、注目されるようになることで需要が増え、それに伴って漁獲量が増えることで資源量が激減してしまうかもしれません。“外来生物”に関しては、前述したような意見の相違のほか、外来生物の個体数削減に向けた料理等への活用により、次第に需要が生まれることで逆に外来生物の除去が困難になってしまうかもしれません。こういった対立を含む内容を踏まえた上で、いかにバランスの取れた対応を選択していけるかが今後大切になると私は考えました。そして、この選択には『知識』が必要であり、そのために正しい知識を伝える人の存在が重要になってくると思いました。こういった難しい問題に取り組まれているために色々と反対意見を言われることもあると仰っていましたが、面白く魅力のある活動を通して知識を伝える人として、ハットリさまが今後ご活躍されることをお祈り申し上げます。私も1若者として、今回お話いただいた問題について積極的に取り組んでいきたいと考えています。

この記事を書いたライター
神戸大学 大学院理学研究科 生物学専攻 M2