第6回目の魚講では、有限会社ブルーハーバーの代表取締役、かつ公益財団法人黒潮生物研究所の理事である和田康嗣さまに、「生かしてなんぼ、激レアさんを売ってきた!」というテーマで講演していただきました。
まずは、和田さまが現在の仕事に就くこととなった経緯についてご説明していただきました。和田さまは不動産会社勤務からマリンアクア業界に海水魚の飼育経験が無い状態で飛び込むという選択をされた後、様々な出来事や出会いを経て、ブルーハーバーの開業、および黒潮生物研究所の開設に携われました。これら海水魚業界に従事する中で、“飼育水の立ち上げまでに半年ほどかかる”などといった水槽の濾過に関する日本の常識について疑問に思うようになり、世界に目を向けてみると「プロテインスキマー」という泡の力で汚れを取り除く濾過装置が主流になってきているということを発見されました。そこで、日本の常識を変えるべく「プロテインスキマー」などの海外の水槽システムを輸入販売し始め、現在では多くの水族館で導入されているとのことです。また、黒潮生物研究所ではサンゴがメインの研究対象であることより、サンゴ飼育にも力を入れて取り組んでおり、サンゴ水槽の濾過システムや照明の開発・設置も行っておられます。
これまでは海水魚飼育の設備分野についての内容でしたが、続いては生体の分野でのメインの取り扱いである「レアフィッシュ」についてご説明していただきました。レアフィッシュとは名前の通り、水深深くのトワイライトゾーンなど、採集するのに厳しい環境に生息するため、取り扱いが珍しい魚のことをいいます。これらの魚は高額で取引され、中には1匹で高級車が買えるほどの価値がある魚がいるようです。このレアフィッシュはダイビングや釣りなどで採集されます。例えば、釣りでの採集では数時間もかけて徐々に魚を引き上げることで、魚をしっかりと減圧した状態にします。これほど手間をかけるのは、レアフィッシュを取り扱う上で一番大切なことが“コンディション良く生かす”ことであるということに繋がります。レアフィッシュがいくら珍しくても死んでしまえば1円にもなりません。そのため、水温など採集場所の環境の理解を深めることや採集・減圧・輸送方法を開発・改良することで、レアフィッシュを元気に生かし、お客様に届ける技術の発展に努めているとのことです。
最後に、今回の講演を受講した私の感想です。私自身アクアリウムを趣味にしているため、魚に金銭的価値を見出す分野の1つとして観賞魚があることは認識しているつもりでした。しかし、これはあくまで淡水魚についてであり、海水魚となると“食用分野”にのみ着目してしまい、“観賞用分野”を忘れてしまっているということを今回の講義より気づかされました。和田さまも仰っていましたが、私と同じように考えてしまっている人が大半を占めているのではないかと思います。今回の講義で説明された通り、生きた海水魚というのは価値があります。実際に、市場では死んだ魚が数千円なのに対してそれを生きたまま販売すると数万円の価値になったり、漁で外道として獲れる魚に数万円の価格がついたりといった例があるようです。現在、持続可能な資源管理の観点から市場での価値が見出されない「未利用魚」の活用が注目されており、全国各地で“食用”としての価値を見出す活動が行われていますが、今回の内容を踏まえると、“鑑賞用”としての価値を見出すという選択肢も需要があるのではないかと考えられます。また、講義の中で「観賞魚の養殖」というワードが出てきましたが、これも私の新たな気づきの1つとなりました。観賞魚の養殖は食用魚の養殖に比べて、出荷サイズが小さい魚でも十分な価値が付く、つまり世話をする期間が短く済むなどといったメリットがあるとのことです。特に海水魚について、食用魚の養殖に比べると観賞用魚の養殖はまだまだ発展していない分野ではありますが、需要は必ずあると思いますので、新たな市場として飛び込む価値は十分にあるのではないかと考えています。