2022/11/24 【レポート】[魚講 前期05]わたしが外来生物問題に取り組むわけ

第5回目の魚講では、株式会社自然回復の代表取締役である谷口真理さまに、「わたしが外来生物問題に取り組むわけ」というテーマで講演していただきました。

まずは、そもそも外来生物とはどういった生物であり、どのような生物が確認されているのかについて、写真を提示しながらご説明していただきました。外来生物とは「人間の活動によって他の地域から入ってきた生物」のことをいい、有名な例としてブラックバスやミシシッピアカミミガメなどが挙げられます。そして、①ペットや鑑賞目的で連れてくる ②農作物や家畜、食用として持ち込む ③外国からの荷物に紛れ込んでくる、といった経路で日本に移入した外来生物は既に日本に定着してしまっている現状にあるとのことです。実際に、日本の川で在来生物を捕獲しようとしても外来生物しか獲れなかったという写真が提示されて、衝撃を受けました。また、上述した外来生物の定義によると、国内の自然分布域外から“人為的に”持ち込まれた生物も「国内外来生物」として認められ、問題になっているようです。(つまり、海流によって移入した魚などは国内外来生物に当てはまらないということも重要です。)

続いて、この外来生物が引き起こす問題について、谷口さまが専門にされている「カメ」を例に挙げてご説明していただきました。一番の問題は「日本の生態系に多大な影響を与える」ことであり、在来生物が持つ捕食・被食関係や生息域への影響が問題となっているとのことです。その実例として、前者については、外来生物であるアライグマが在来生物であるイシガメを捕食しているようです。また、後者については、外来生物であるミシシッピアカミミガメの「産卵数が多い」「日本の環境では性比がメスに偏る」といった特性による個体数の急増により、イシガメの生息域が奪われているようです。これらを要因として、在来生物が外来生物に置き換わっているという現状となっていると仰っていました。さらに、遺伝子交雑という問題もあり、実際にイシガメと外来生物であるクサガメとの交雑種が発見されているとのことです。

これらの外来生物問題の解決に向けて谷口さまが行ってきた取り組みがいくつかあります。その一つが須磨海浜水族園に設立した「亀楽園」です。この施設では、自然環境下で捕獲された、および家で飼育することができなくなったミシシッピアカミミガメを引き受け、「外来生物の収容」「啓発教育活動」「基礎研究」に取り組んだとのことです。ここでの経験を踏まえて、株式会社自然回復を設立し、現在も精力的に外来生物問題に取り組まれています。最近では、丹波篠山市においてハスの復活を目的としたミシシッピアカミミガメの駆除活動を行い、5年ほどの歳月をかけて個体数を激減させ、ハスの復活を達成できたと仰っていました。

最後に、今回の講演を受講した私の感想です。これまで外来生物問題の現状について写真や統計などの実際のデータを見たことが無かったため、その深刻さを改めて認識する良いきっかけとなりました。また、継続的に外来生物の駆除を行うことで個体数を減少させられると知ることができたことも私にとって大きな収穫となりました。ディスカッションにて、この外来生物問題への取り組みを多くの日本人に普及させるためには、「自然のためになることが良いことである」という価値観の構築が必要であると仰っていましたが、私もその通りだと思います。この価値観の構築には、まずは学校での授業や今回のような講演といった中で外来生物問題について知ってもらい、そして実際にその現状を体験してもらうことが大切であると私は考えます。今回の谷口さまの講演のタイトル「わたしが外来生物問題に取り組むわけ」の答えである「次世代に日本の生物を見せたい」という目的のもと、今後も外来生物問題の解決に向けて頑張っていただきたいです。私も外来生物問題の解決に協力できる機会があれば、積極的に取り組んでいきたいと考えています。

この記事を書いたライター
神戸大学 大学院理学研究科 生物学専攻 M2