第4回目の魚講では、すまうら水産の副代表である若林良さまに、「未来を見据えたすまうら水産の取り組み」というテーマで講演していただきました。
まずは神戸における漁業の歴史や現状について、すまうら水産でのメインの取り扱いである海苔養殖に焦点を当ててご説明いただきました。神戸の須磨浦地区での海苔養殖は海苔の単価および生産者の減少により一時厳しい状況に陥りましたが、2007年に「須磨海苔」が地域団体商標登録されたことで注目されるようになりました。
このブランド化に加えて、今回の講演のメインテーマである“協業化”をすまうら水産が主体となって行ったことも、須磨浦地区の海苔養殖が好転したきっかけとして挙げられました。協業化により「漁場規模を一定で保つ」「設備投資が安定的にできる」などといったことが可能となり、漁場・設備・労働力のバランスを適切に取れるようになってきているとのことです。ただし、この協業化というものは簡単なものではなく、効率的に運営するための明確なルール作りを行うことが大切であると仰っていました。また、協業化によって“漁業を次世代につなぐ”という未来を見据えた目的を掲げているということを強く主張されていました。
この他、すまうら水産が未来を見据えて取り組んでいる活動として、「海苔養殖だけに頼らない経営」「地域社会への貢献」「漁場環境の改善」を挙げられました。1点目に関して、須磨海岸での潮干狩りやサーモン・真珠養殖などを海苔養殖以外に取り組まれています。2点目に関して、海苔工場の見学や須磨浦での地引き網体験を開催することで、多くの人に須磨の海の魅力を伝える活動に取り組まれています。3点目に関して、現在海苔養殖では「栄養塩不足による色落ちの拡大」や「温暖化による海水温上昇での漁期の短縮」「他生物による食害」といった環境要因による生産量の減少に悩まされているとのことです。これらの問題の解決策を専門家等と協力して模索することに加えて、須磨海岸の美化活動などを行い、漁場環境の改善に取り組まれています。そして、目指す先には栄養が豊富で生き物の棲家がある“豊かな海”を作ることがあると仰っていました。
最後に、今回の講演を受講した私の感想です。これまで漁業というものは結局のところ個人プレイであり、それが漁業の敷居をかなり高くしているという印象を持っていました。
しかし、今回の講演で“協業化”という形態について学び、私の中でその印象を変える新たな視点を得ることができました。講演内容を踏まえ、漁業の協業化は漁業の効率を高め合うこと、また特に、新規参入の壁というものを大きく下げることを可能にすると私は考えています。